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朝起きたら、父からメールが届いていた。曰く、誕生日プレゼントを送った、感謝しろという。続けざまに「お前はいつも感謝が足りない」と届いた通知を誤ってタップしてしまい、既読がついてしまった。いやだなあと思いつつも、予測変換でありがとうとだけ、一言送った。

職場に行ったら、先輩に制作を依頼していたデータがおとといにはメールで届いていたようだった。休日だからと放置してしまった、やばいやばいと思いながらボスに確認依頼のメールを送ると、他の上司から叱責を受けた。「…くんはさあ、急ぐかなと思って休みの日や夜遅くにデータ送ってくれてるわけじゃん。それを無視して勝手に進めるのよくないよ。ありがとうとかさ、ひとことくらい言わないとさ」(それはそう)。その先輩は離席していたので、取り急ぎメールを送った。順番が前後してしまい、大変申し訳ございません。データ、確かに拝受しております。ご多忙のおり、お手数をおかけしました。ありがとうございます。現在各所に確認をとっておりますので、修正が必要な場合は追って相談させていただければと思います。云々。

そういえば、つい最近別れた男にも、最後に「あなたは、俺がしたことに感謝しないでしょ」と言われたのだった(いったい何に感謝すればよかったのか、正直いまだにわからない)。

言うまでもなく、感謝=thankは、思惟=thinkと同源の語である。「感謝」の要求とは、換言すれば、「私を想え」ということにほかならない。だから、「感謝しろ」と言われるたびにいつも、デカルト現象学悪魔合体みたいだと思う。とはいえ、一方で「感謝」とは儀礼なのであり、適切なタイミングで、適切な何かを、交換として差し出さなければならない。その意味で、ラインスタンプとは、通貨の発明と言って過言ではない。ただ、みんなが怒っているのは、そういうことではないんだろうな。

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そんなことより、私は今日大変化粧がうまくいったので、血色のいいつややかな顔で、上機嫌に過ごしたのであった。